今、皇子とヒョリンの関係がどうなっているのか、私にはよく分からなかった。
けれど、皇子が寂しい心を抱えているということは、確かに背中から伝わって来る。
僅かな振動が、泣いているように感じるの。
「ごめんね、私、シン君を苦しめるつもりなんてないのよ。私って、ホント、頭悪いから、全然気づかなかった!でも、人を傷つけて気付かないなんて、最低だわ。本当に、ごめんなさい!」
皇子は黙ったまま・・・。
抱きついてお腹に回した手に、皇子の掌が重なった。
「チェギョン、おまえが悪いんじゃない。違うんだ。」
「シン君・・・。」
皇子が私の手を解いて、振り向いた。
「おまえは、正しいことを言っていた。僕が、勝手に落ち込んでいただけ・・・。」
「勝手に?」
「おい、許嫁。」
「へ?」
「僕は、今、寒いんだ・・・。」
「うん・・・、背中、暖める?」
「いや、今度は前だ!」
皇子の両腕にふわっと体を包まれたかと思ったら、くっと抱きしめられた。
「最初にここで、おまえが背中を暖めてくれた時も、ヒョリンと話をした後だった。」
「そうだったの?」
「プロポーズの件で、僕とヒョリンには、見解の相違がある。」
見解の相違って・・・、また、お堅い言葉だ。
「プロポーズのことは、すぐに僕の中で『終ったこと』になっていた。断られて、気恥ずかしい気持ちもあったけど、ヒョリンはそれまでと同じ態度で、それは、振った皇子に対する気遣いだと感謝していた。」
皇子の腕の中で、ヒョリンとの関係を聞くのは,少し苦しい。
でも、今私は、慰め役だ。
皇子の背中に手を回して、そっと さすった。
「『プロポーズ』や『好きな人』という言葉は、終ったことを蒸し返されているようで、イラついた。自分の冷たさを指摘されていると感じて、辛かった。でも、それは、自分の軽さのせいだから、おまえのせいじゃない。」
そういえば、ヒョリンの事を話す度、皇子はいつも怒っていた。
「あの日、ヒョリンが言ったんだ。『プロポーズするほど思ってくれるなんて嬉しい。』『シンとの未来も、私の夢よ。』って。
それを聞いて、愕然とした。終わったことだと思っていたのに、二人の未来を語られて、戸惑ったんだ。」
「シン君・・・。」
「確かに、好きだったかもしれない。ガールフレンドと呼べるような存在は、彼女だけだったから。『美人の彼女』と言われれば、少し鼻が高い気分にもなっていた。バレエも心から応援していたし、気心の知れた友人であったことは、間違いない。」
皇子の、ヒョリンへの想いを聞くのは、やはり辛い。
「僕は、”宮”の中で自分の立場に悩んでいた。だからプロポーズして、お妃を自分で決めると言う能動的な行動を取ることで、自分の意思を示そうとした。
でも、断られた時のヒョリンの言葉は、素直に納得出来るものだった。彼女の夢を奪うようなことはすべきじゃないし、彼女の人生の責任を背負う覚悟など、これっぽっちも無かったから。」
能動的?えっと・・・なんだっけ?
「少し焦っていた。その気にさせておいて、振り向いたら背を向ける、そんな勝手な男になっている自分が情けなくて・・・、冷汗が出ていたんだ。」
「暖まりたいって・・・、本当だったのね?」
「あの時、おまえの顔を見たら、”宮”の庭で一緒にのんびりした気楽な雰囲気を思い出して、その空気に浸りたくなった。」
「私、いっつも、能天気だもんね。」
「寒いの?って聞かれて、本心を見抜かれたようで驚いた。」
「そう、だったの?」
「暖めてあげようか?って言われて、本当に、暖まりたいと思ったんだ。」
「半分、冗談だったんだけど・・・。」
「ふっ、さすが『許嫁』だな。」
「え?」
「お祖父様の声が聞こえる。」
「それは、本当に冗談よ!」
「いや、きっとお前は聞いたんだ。『許嫁よ、太子を暖めよ』」
「シン君・・・。」
「おまえは、ホント、面白くて・・・、あったかい!」
皇子がさらに力を込めて、私を抱きしめた。
私も思い切り、皇子の背中に抱きついた。
自分の中の母性本能が、これほどのものとは思わなかった。
偉そうに大人ぶった、この大きな子どもを、思い切り暖めてあげたい!
そして、さらに気付いたこと。
抱き合う体温の交流は、こんなにも心を幸せにするものなんだ!
しばらくすると、皇子の力が抜けて、体が解放された。
「シン君・・・、本当に、ヒョリンには夢を叶えて欲しいのね?」
「ああ。」
「本当に、本当に、ヒョリンとの未来は考えていないのね?」
「本当だ。」
「じゃあ・・・、私・・・、『許嫁』になってあげる。」
「今も、『許嫁』だろう?まだ・・・。」
「ヒョリンに宣言したでしょう?私、否定しないよ。ヒョリンに聞かれたら、シン君の『許嫁』だって宣言する。それでも、大丈夫?」
「おまえは、それでもいいのか?」
「うん、先帝様が言ってるの。」
「え?」
「『許嫁』よ、太子の窮地を救うのじゃ!」
「ぷっ・・・、何だ、それ?」
皇太子が笑ってる。
私、とっても嬉しい。
この笑顔が見られるのなら、すべてを投げ出しても構わない!
いや・・・、『すべて』は、言い過ぎだな。
「ん?これは何だ?」
皇子が拾い上げたのは、私が書いた皇太后様へのお手紙!
抱き合うドサクサに、ポケットから落ちたらしい。
まだ、封をしていなかった!
「あ、見ちゃダメ!」
「おまえのか?ふっ、見るなと言われると、見たくなる!」
「ダメだったら~!」
こういう時、長身は卑怯だ!
手を伸ばしても、全然届かないところで手紙を広げて、皇子は勝手に読み始めている。
他人の手紙を勝手に読むなんて、犯罪よーっ!
「おまえ・・・、お祖母様に、僕との付き合いを断る手紙を書いたのか?」
「ねえ、返してったらー!」
「好きな人が出来ました?ふんっ、誰だ?」
「誰って、そんなこと、シン君には関係ないでしょう?」
「関係ないことは無い!教えろ、好きな奴って、誰なんだ?」
「言いたくない!」
「言え!」
「知ってどうするのよ!」
「僕はおまえの『許嫁』だ。知る権利がある!」
「そんなの、横暴よ!」
「とにかく、いずれ必ず、確認するからな。覚悟しておけ!」
「確認?」
「好きな男の名だ!」
ひ~~~~~っ!
絶体、言うもんか-!!!
---to be continued
なんか・・・、バタバタした感じですみません。
今日はこれから、ちょびっと、飲みに行きます。
リコメ、無いと思いまーす!
(^^)/
けれど、皇子が寂しい心を抱えているということは、確かに背中から伝わって来る。
僅かな振動が、泣いているように感じるの。
「ごめんね、私、シン君を苦しめるつもりなんてないのよ。私って、ホント、頭悪いから、全然気づかなかった!でも、人を傷つけて気付かないなんて、最低だわ。本当に、ごめんなさい!」
皇子は黙ったまま・・・。
抱きついてお腹に回した手に、皇子の掌が重なった。
「チェギョン、おまえが悪いんじゃない。違うんだ。」
「シン君・・・。」
皇子が私の手を解いて、振り向いた。
「おまえは、正しいことを言っていた。僕が、勝手に落ち込んでいただけ・・・。」
「勝手に?」
「おい、許嫁。」
「へ?」
「僕は、今、寒いんだ・・・。」
「うん・・・、背中、暖める?」
「いや、今度は前だ!」
皇子の両腕にふわっと体を包まれたかと思ったら、くっと抱きしめられた。
「最初にここで、おまえが背中を暖めてくれた時も、ヒョリンと話をした後だった。」
「そうだったの?」
「プロポーズの件で、僕とヒョリンには、見解の相違がある。」
見解の相違って・・・、また、お堅い言葉だ。
「プロポーズのことは、すぐに僕の中で『終ったこと』になっていた。断られて、気恥ずかしい気持ちもあったけど、ヒョリンはそれまでと同じ態度で、それは、振った皇子に対する気遣いだと感謝していた。」
皇子の腕の中で、ヒョリンとの関係を聞くのは,少し苦しい。
でも、今私は、慰め役だ。
皇子の背中に手を回して、そっと さすった。
「『プロポーズ』や『好きな人』という言葉は、終ったことを蒸し返されているようで、イラついた。自分の冷たさを指摘されていると感じて、辛かった。でも、それは、自分の軽さのせいだから、おまえのせいじゃない。」
そういえば、ヒョリンの事を話す度、皇子はいつも怒っていた。
「あの日、ヒョリンが言ったんだ。『プロポーズするほど思ってくれるなんて嬉しい。』『シンとの未来も、私の夢よ。』って。
それを聞いて、愕然とした。終わったことだと思っていたのに、二人の未来を語られて、戸惑ったんだ。」
「シン君・・・。」
「確かに、好きだったかもしれない。ガールフレンドと呼べるような存在は、彼女だけだったから。『美人の彼女』と言われれば、少し鼻が高い気分にもなっていた。バレエも心から応援していたし、気心の知れた友人であったことは、間違いない。」
皇子の、ヒョリンへの想いを聞くのは、やはり辛い。
「僕は、”宮”の中で自分の立場に悩んでいた。だからプロポーズして、お妃を自分で決めると言う能動的な行動を取ることで、自分の意思を示そうとした。
でも、断られた時のヒョリンの言葉は、素直に納得出来るものだった。彼女の夢を奪うようなことはすべきじゃないし、彼女の人生の責任を背負う覚悟など、これっぽっちも無かったから。」
能動的?えっと・・・なんだっけ?
「少し焦っていた。その気にさせておいて、振り向いたら背を向ける、そんな勝手な男になっている自分が情けなくて・・・、冷汗が出ていたんだ。」
「暖まりたいって・・・、本当だったのね?」
「あの時、おまえの顔を見たら、”宮”の庭で一緒にのんびりした気楽な雰囲気を思い出して、その空気に浸りたくなった。」
「私、いっつも、能天気だもんね。」
「寒いの?って聞かれて、本心を見抜かれたようで驚いた。」
「そう、だったの?」
「暖めてあげようか?って言われて、本当に、暖まりたいと思ったんだ。」
「半分、冗談だったんだけど・・・。」
「ふっ、さすが『許嫁』だな。」
「え?」
「お祖父様の声が聞こえる。」
「それは、本当に冗談よ!」
「いや、きっとお前は聞いたんだ。『許嫁よ、太子を暖めよ』」
「シン君・・・。」
「おまえは、ホント、面白くて・・・、あったかい!」
皇子がさらに力を込めて、私を抱きしめた。
私も思い切り、皇子の背中に抱きついた。
自分の中の母性本能が、これほどのものとは思わなかった。
偉そうに大人ぶった、この大きな子どもを、思い切り暖めてあげたい!
そして、さらに気付いたこと。
抱き合う体温の交流は、こんなにも心を幸せにするものなんだ!
しばらくすると、皇子の力が抜けて、体が解放された。
「シン君・・・、本当に、ヒョリンには夢を叶えて欲しいのね?」
「ああ。」
「本当に、本当に、ヒョリンとの未来は考えていないのね?」
「本当だ。」
「じゃあ・・・、私・・・、『許嫁』になってあげる。」
「今も、『許嫁』だろう?まだ・・・。」
「ヒョリンに宣言したでしょう?私、否定しないよ。ヒョリンに聞かれたら、シン君の『許嫁』だって宣言する。それでも、大丈夫?」
「おまえは、それでもいいのか?」
「うん、先帝様が言ってるの。」
「え?」
「『許嫁』よ、太子の窮地を救うのじゃ!」
「ぷっ・・・、何だ、それ?」
皇太子が笑ってる。
私、とっても嬉しい。
この笑顔が見られるのなら、すべてを投げ出しても構わない!
いや・・・、『すべて』は、言い過ぎだな。
「ん?これは何だ?」
皇子が拾い上げたのは、私が書いた皇太后様へのお手紙!
抱き合うドサクサに、ポケットから落ちたらしい。
まだ、封をしていなかった!
「あ、見ちゃダメ!」
「おまえのか?ふっ、見るなと言われると、見たくなる!」
「ダメだったら~!」
こういう時、長身は卑怯だ!
手を伸ばしても、全然届かないところで手紙を広げて、皇子は勝手に読み始めている。
他人の手紙を勝手に読むなんて、犯罪よーっ!
「おまえ・・・、お祖母様に、僕との付き合いを断る手紙を書いたのか?」
「ねえ、返してったらー!」
「好きな人が出来ました?ふんっ、誰だ?」
「誰って、そんなこと、シン君には関係ないでしょう?」
「関係ないことは無い!教えろ、好きな奴って、誰なんだ?」
「言いたくない!」
「言え!」
「知ってどうするのよ!」
「僕はおまえの『許嫁』だ。知る権利がある!」
「そんなの、横暴よ!」
「とにかく、いずれ必ず、確認するからな。覚悟しておけ!」
「確認?」
「好きな男の名だ!」
ひ~~~~~っ!
絶体、言うもんか-!!!
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なんか・・・、バタバタした感じですみません。
今日はこれから、ちょびっと、飲みに行きます。
リコメ、無いと思いまーす!
(^^)/