「ねえ、シ~ン!チェギョンとは上手く行ってる?」
「姉さん、放っておいてくれと言ったはずだろう?!」
「ふふっ、その様子だと、イマイチなのね?私が、仲を取り持ってあげましょうか?」
「余計なことしないでくれよ!かえって、面倒なことになりそうだ!」
「あら、そんなこと言って、いいのかいしら?シンがそんな態度なら、私は勝手にやらせてもらうわ。」
「何をやるって言うんだ?」
「チェギョンは、私の友人のお店でバイトしている、可愛い後輩よ。シンなんかより、ず~っと親しい関係だわ!」
「な・・・、何か企んでるのか?」
「人聞きの悪いこと言わないでよ!可愛い後輩と楽しく遊ぼうと思っているだけよ。」
「・・・、楽しく・・・、遊ぶ・・・。」
「じゃあね~!」
シンは天井を見上げた。
姉のヘミョンの行動を制することなど、誰にも出来はしない。
シンは、幼いころから自由奔放だった、この国の公主の性格を熟知していて、少し嫌な予感がした。
あまり派手なことをしてくれるなよ、姉貴!
その嫌な予感はすぐに的中した。
週末。
午前中の外出公務から戻ったシンが、正殿で皇帝に報告をして東宮に戻ろうとすると、ホールから音楽が流れて来た。
「ん?今日は何か、あったかな?」
「殿下、只今、公主媽媽が、ダンスのレッスンをなさっています。」
正殿付きの内官が答えた。
「ダンスのレッスン?そんなこと、必要ないだろう?競技ダンスでも、始めるつもりか?」
あの姉ならば、それもあり得る、と思いながら、シンはホールへと足を運んだ。
重い扉を開くと、二人の女性が佇んでいた。
手を繋ぎあい、腰に手を回して、密着度はかなり濃い!
「チェギョン、なかなか上手いじゃない?初日からこんなにできるなんて、先が楽しみよ!」
「そ、そうですか?足が思うように動かなくて、全然ダメだと思うんですけど・・・。」
「大丈夫!慣れれば考えなくても自然と動くようになるから!」
「そうですか?上手に踊れたら、楽しいでしょうね!」
皇女ヘミョンと手を繋いでいたのは、チェギョンだった。
「ね、姉さん・・・。」
「あら、シン、お帰り!早かったわね!」
「何を、しているのですか?」
「見れば分かるでしょう?ダンスのレッスンよ。」
皇太子の登場に、チェギョンは肩をすぼめて小さくなった。
「これは・・・、どういうことですか、姉さん?」
「チェギョンにね、ダンスを教えてるのよ!友人として、私のパーティーに出席して欲しいから。」
「姉さんのパーティーに?」
「そうよ!チェギョンは遠慮してたけど、無理矢理連れて来ちゃった!」
軽やかに笑う公主媽媽。
「もう少しで休憩するから、一緒にお茶しない?」
「あ、ああ・・・。」
「ふふっ!」
弟は絶体に断らない、と皇女ヘミョンは確信していた。
愛しのチェギョンとのひと時だ。
手放せるはずはない!
女性二人でホールの窓際でお茶を飲んでいると、着替えを終えたシンが戻って来た。
3人で丸テーブルを囲み、優雅なお茶会だ。
「チェギョンは筋が良いわよ。ダンスパーティーに出たら、殿方の順番待ちの列が出来るでしょうね!」
「お姉様、そんなことありません!何度も足を踏んでしまって、本当にごめんなさい。」
「ふふふ、あんなのへっちゃらよ!そうだ、シン!この後、相手をしてあげてよ。男性のリードなら、もっと上達すると思うわ。」
「お、お姉様!ダメです!」
「どうして?」
「えっと・・・、殿下はきっと、お忙しいと思います!」
ヘミョンのぺースに焦るチェギョン。
「別に、忙しくは無い。いくらでも、お相手しよう。」
「へ・・・、シン君?」
「みっちり、仕込んでやる。覚悟しろ、チェギョン!」
「ひっ!」
シンの言葉通り、お茶の後、皇太子のリードでダンスが始まった。
大学で受けたほんのわずかの指導に比べて、今日は背中に回された手が、力強く体を抱きしめて来る。 腹部がぴったりと密着して、足さばきによっては、太ももの内側にシンの足が入り込む。
その度に焦ってステップを間違えて、やり直し。
繰り返される厳しい指導で、チェギョンは汗をかきながら、逞しい腕の中でシンの間近な視線を受けていた。
そんなことが小一時間も続いて、やっとレッスン終了。
「すごいわ!シンのリードなら、もうパーティーに出ても、他の人と遜色ないんじゃないかしら?」
「シン君のリードについて行ってるだけだから、全然覚えていません。」
「そうやって、体で覚えるのが一番なのよ。ねえ、シン!また、教えてあげてね。」
「あ、ああ・・・。時間があったらな。」
「ふふっ、シンの時間のある時にチェギョンを呼んであげるから!大丈夫よ!」
「ちっ・・・。」
「嬉しいでしょう、シン?」
「姉さん!」
皇族姉弟の会話にチェギョンは入り込む余地がない。
「チェギョン、すごい汗ね。私のところでシャワーを使って!着替えを貸すわ。」
「すみません。」
「シン!覗いちゃダメよ!」
「覗くかっ!」
姉にからかわれているシンを見て、チェギョンはクスっと笑った。
意外と可愛らしい面があり、少しホッとするのだ。
いつもは強引な雰囲気にこちらがドギマギしてしまうけれど、姉のヘミョンは一枚うわてで、掌で転がすように、皇太子を軽くあしらっている。
「公主様って、すごいですね!」
「え、何が?」
「だって、シン君、お姉様には、全然勝てない感じで、驚きました!」
「あら、そう?あの年頃の男なんて、偉そうにしてても空威張りよ!中身は子供なんだから!」
「そう、なんですか?」
「チェギョンも、皇太子だからって、シンにビビること無いわ。あの子はあなたに、ぞっこんなんだから。」
「え?」
「ふふふ、姉の私が言うんだから、間違いないわ!あの子は、チェギョンをお妃にしたいのよ。」
「ま、まさか・・・。」
「いいのよ、しばらくは焦らしたらいいんだわ。すぐにいい思いをさせるなんて、悔しいもの。」
「焦らすなんて・・・、そんな・・・。」
「ふふふ・・・、何か、パーティーを開く口実ないかしら?チェギョンが殿方とダンスを踊っている時の、シンの顔が見てみたいわ~!」
悪魔のような公主の笑い。
東宮殿に向かって歩いていたシンは、
不穏な空気を察知して、背筋に冷たいものを感じていた。
---to be continued
ヘミョン姉さん・・・出過ぎ?
(-"-)
「姉さん、放っておいてくれと言ったはずだろう?!」
「ふふっ、その様子だと、イマイチなのね?私が、仲を取り持ってあげましょうか?」
「余計なことしないでくれよ!かえって、面倒なことになりそうだ!」
「あら、そんなこと言って、いいのかいしら?シンがそんな態度なら、私は勝手にやらせてもらうわ。」
「何をやるって言うんだ?」
「チェギョンは、私の友人のお店でバイトしている、可愛い後輩よ。シンなんかより、ず~っと親しい関係だわ!」
「な・・・、何か企んでるのか?」
「人聞きの悪いこと言わないでよ!可愛い後輩と楽しく遊ぼうと思っているだけよ。」
「・・・、楽しく・・・、遊ぶ・・・。」
「じゃあね~!」
シンは天井を見上げた。
姉のヘミョンの行動を制することなど、誰にも出来はしない。
シンは、幼いころから自由奔放だった、この国の公主の性格を熟知していて、少し嫌な予感がした。
あまり派手なことをしてくれるなよ、姉貴!
その嫌な予感はすぐに的中した。
週末。
午前中の外出公務から戻ったシンが、正殿で皇帝に報告をして東宮に戻ろうとすると、ホールから音楽が流れて来た。
「ん?今日は何か、あったかな?」
「殿下、只今、公主媽媽が、ダンスのレッスンをなさっています。」
正殿付きの内官が答えた。
「ダンスのレッスン?そんなこと、必要ないだろう?競技ダンスでも、始めるつもりか?」
あの姉ならば、それもあり得る、と思いながら、シンはホールへと足を運んだ。
重い扉を開くと、二人の女性が佇んでいた。
手を繋ぎあい、腰に手を回して、密着度はかなり濃い!
「チェギョン、なかなか上手いじゃない?初日からこんなにできるなんて、先が楽しみよ!」
「そ、そうですか?足が思うように動かなくて、全然ダメだと思うんですけど・・・。」
「大丈夫!慣れれば考えなくても自然と動くようになるから!」
「そうですか?上手に踊れたら、楽しいでしょうね!」
皇女ヘミョンと手を繋いでいたのは、チェギョンだった。
「ね、姉さん・・・。」
「あら、シン、お帰り!早かったわね!」
「何を、しているのですか?」
「見れば分かるでしょう?ダンスのレッスンよ。」
皇太子の登場に、チェギョンは肩をすぼめて小さくなった。
「これは・・・、どういうことですか、姉さん?」
「チェギョンにね、ダンスを教えてるのよ!友人として、私のパーティーに出席して欲しいから。」
「姉さんのパーティーに?」
「そうよ!チェギョンは遠慮してたけど、無理矢理連れて来ちゃった!」
軽やかに笑う公主媽媽。
「もう少しで休憩するから、一緒にお茶しない?」
「あ、ああ・・・。」
「ふふっ!」
弟は絶体に断らない、と皇女ヘミョンは確信していた。
愛しのチェギョンとのひと時だ。
手放せるはずはない!
女性二人でホールの窓際でお茶を飲んでいると、着替えを終えたシンが戻って来た。
3人で丸テーブルを囲み、優雅なお茶会だ。
「チェギョンは筋が良いわよ。ダンスパーティーに出たら、殿方の順番待ちの列が出来るでしょうね!」
「お姉様、そんなことありません!何度も足を踏んでしまって、本当にごめんなさい。」
「ふふふ、あんなのへっちゃらよ!そうだ、シン!この後、相手をしてあげてよ。男性のリードなら、もっと上達すると思うわ。」
「お、お姉様!ダメです!」
「どうして?」
「えっと・・・、殿下はきっと、お忙しいと思います!」
ヘミョンのぺースに焦るチェギョン。
「別に、忙しくは無い。いくらでも、お相手しよう。」
「へ・・・、シン君?」
「みっちり、仕込んでやる。覚悟しろ、チェギョン!」
「ひっ!」
シンの言葉通り、お茶の後、皇太子のリードでダンスが始まった。
大学で受けたほんのわずかの指導に比べて、今日は背中に回された手が、力強く体を抱きしめて来る。 腹部がぴったりと密着して、足さばきによっては、太ももの内側にシンの足が入り込む。
その度に焦ってステップを間違えて、やり直し。
繰り返される厳しい指導で、チェギョンは汗をかきながら、逞しい腕の中でシンの間近な視線を受けていた。
そんなことが小一時間も続いて、やっとレッスン終了。
「すごいわ!シンのリードなら、もうパーティーに出ても、他の人と遜色ないんじゃないかしら?」
「シン君のリードについて行ってるだけだから、全然覚えていません。」
「そうやって、体で覚えるのが一番なのよ。ねえ、シン!また、教えてあげてね。」
「あ、ああ・・・。時間があったらな。」
「ふふっ、シンの時間のある時にチェギョンを呼んであげるから!大丈夫よ!」
「ちっ・・・。」
「嬉しいでしょう、シン?」
「姉さん!」
皇族姉弟の会話にチェギョンは入り込む余地がない。
「チェギョン、すごい汗ね。私のところでシャワーを使って!着替えを貸すわ。」
「すみません。」
「シン!覗いちゃダメよ!」
「覗くかっ!」
姉にからかわれているシンを見て、チェギョンはクスっと笑った。
意外と可愛らしい面があり、少しホッとするのだ。
いつもは強引な雰囲気にこちらがドギマギしてしまうけれど、姉のヘミョンは一枚うわてで、掌で転がすように、皇太子を軽くあしらっている。
「公主様って、すごいですね!」
「え、何が?」
「だって、シン君、お姉様には、全然勝てない感じで、驚きました!」
「あら、そう?あの年頃の男なんて、偉そうにしてても空威張りよ!中身は子供なんだから!」
「そう、なんですか?」
「チェギョンも、皇太子だからって、シンにビビること無いわ。あの子はあなたに、ぞっこんなんだから。」
「え?」
「ふふふ、姉の私が言うんだから、間違いないわ!あの子は、チェギョンをお妃にしたいのよ。」
「ま、まさか・・・。」
「いいのよ、しばらくは焦らしたらいいんだわ。すぐにいい思いをさせるなんて、悔しいもの。」
「焦らすなんて・・・、そんな・・・。」
「ふふふ・・・、何か、パーティーを開く口実ないかしら?チェギョンが殿方とダンスを踊っている時の、シンの顔が見てみたいわ~!」
悪魔のような公主の笑い。
東宮殿に向かって歩いていたシンは、
不穏な空気を察知して、背筋に冷たいものを感じていた。
---to be continued
ヘミョン姉さん・・・出過ぎ?
(-"-)