須臾の恋落ち(4)
海から戻った皇太子。 東宮殿の自室で、さっそくカメラのメディアをパソコンにつなぎ、写真の写りを確認していた。 「チェギョン、やっぱり可愛いな!」 写真のチェギョンは、どれもシンの心を捉えて離さない表情だった。 笑った顔はもちろん、口を尖らせ すねたような表情も魅力的だ。 遠く海を見つめる瞳が、愁いを帯びて いい雰囲気になっている。 初めから惹かれていたけれど、会えば会うほど、好きになる!...
View Article須臾の恋落ち(5)
毎日だって、チェギョンに会いたい。 恋する皇子の心境と、置かれている状況は、相入れない。 公務や執務、訓育に追われるシンは、 なかなかチェギョンをデートに誘うことが出来ないのだ。 電話やメールで話をすると、時折、ギョンの名が出て来る。 皇子のご学友は、鬼の居ぬ間(?)に、自分の恋の作戦を遂行中のようだ。 「いいなぁ・・・、ギョンのやつ!僕だって、チェギョンと直接会いたいのに!」...
View Article須臾の恋落ち(6)
公用車の後部座席で、皇太子は少し怒り顔。 チェギョンは、ほとんど泣きそうな顔をしていた。 「チェギョン、心配するな。代わりのバイトは用意する!」 「代わり?」 「とにかく、あんなことを我慢しなくちゃならないなんて、ひど過ぎる。」 「シン君・・・。」 「ホテルには改善を求める。色よい返事が無ければ、”宮”との取り引きは切る。」 「私のせいで、ホテルが・・・。」 「チェギョンのせいじゃないっ!」...
View Article須臾の恋落ち(7)
大学構内の庭には、明るい日差しが差していた。 木陰に置かれたベンチに座り、チェギョンはアルバイト情報誌を広げている。 前日の夜、シンからアルバイトについてメールが来ていたが、「バイトは自分で探す」と、素っ気なく返事をしてそれっきり。 時折、チェギョンの脳裏には、シンが女性を口説くシーンが浮かんで、嫉妬と寂しさが織り交ざった、複雑な感情を持て余していた。...
View Article須臾の恋落ち(8)
「シ~ン~!チェギョンの面接、無事済んだわよ!グヨン、彼女を気に入ってくれたわ!」 「そうか、よかった。助かったよ、姉さん。」 「ふふふ・・・、あなた達、どういう関係なの?チェギョンは、ちょっと、皇太子に対して、腰が引けてる感じがするけど?」 「どういうって・・・、友達だよ。」 「チェギョンもそう言ってた。グヨンにシンの彼女だって言ったら、慌てて否定して・・・。」...
View Article須臾の恋落ち(9)
「ねえ、シ~ン!チェギョンとは上手く行ってる?」 「姉さん、放っておいてくれと言ったはずだろう?!」 「ふふっ、その様子だと、イマイチなのね?私が、仲を取り持ってあげましょうか?」 「余計なことしないでくれよ!かえって、面倒なことになりそうだ!」 「あら、そんなこと言って、いいのかいしら?シンがそんな態度なら、私は勝手にやらせてもらうわ。」 「何をやるって言うんだ?」...
View Article須臾の恋落ち(10)
腕の中にチェギョンが居た。 柔らかい感触。 甘い香り。 首筋に汗が光り、漏れる息が艶めかしい。 ダンスを踊りながら、シンは、内なる熱を必死で治めていたのだ。 腰に回した手には、つい力が入ってしまう。 密着した部分から、チェギョンの体温が伝わって来て、その感覚は、男女の絡み合いを連想させた。 気持ちの高ぶりを誤魔化すように、指導する声がワザとらしく厳しくなった。...
View Article須臾の恋落ち(11)
皇女ヘミョンの登場で、チェギョンは高貴な友人(?)を二人も持つことになった。 シンに加えて、ヘミョンもメル友になり、度々宮殿に訪れてダンスを習ったり、3人でお茶をしたりと、庶民の女子としては信じられない状況が続いている。 「ねえ、チェギョン。皇太子殿下とは上手く行っているの?」 アルバイト先の店長、マ・グヨンが何気ない表情で聞いて来た。...
View Article須臾の恋落ち(12)
ダブルデートの行き先は、爽やかな高原観光地。 ドライブで山に行こう、と言うシンの希望が叶えられたことになる。 車を降りて思い切り深呼吸したなら、心が開放された気分になれた。 「わ~、いいところね、ギョン!」 「そうだな、ガンヒョン!空気が綺麗で、爽快だ!」...
View Articleお話更新ではありません。
こんばんは。 更新中のお話『須臾の恋落ち』を読んで頂いている皆様、ありがとうございます。 やっとシン&チェがラブラブになりそうなところまで辿り着きました。 それなのに・・・まことに申し訳ないのですが、一時中断致します。 いよいよ、明日11日より、『Princess Hours』Day スタートですよね。 無謀にも、この管理人も参戦しようかと・・・え?戦いじゃない?そうか、そうか、間違った!...
View Article『運命』~Synchronicity(プロローグ)
汝、心のままに生きるが良いそれこそが、天意・・・それこそが『運命』 プロローグ・・・ 「あ、あの・・・、お手洗いはどこでしょうか?」「ご案内致します。」 女官のお姉さんに付いて行き、歴史の趣ある廊下を歩いた。 歩くだけでも、緊張する。こんなところに自分が居るということが、全く信じられない。...
View Article『運命』~Synchronicity(1)
カーゴパンツとジャケットは、よく似たカーキ色で、草むらで目ただない服装。同じような色合いのキャップを被って、雑多な物たちを詰め込んだリュックを背負った。予定していた経路を通って、人目に付かぬように、少しずつ移動する。人の気配がしたら、さっと隠れる場所も、あらかじめ下調べしていて、完璧だ。とにかく、しばらくの間、身を隠したい。一日でいい。この一日の行動で、自分の『運命』を変えるんだ!カサカサと、冬枯れ...
View Article『運命』~Synchronicity(2)
人目に付かぬように、予定した経路を、身を縮めながら歩いていた。ここは、高い塀に囲まれた宮殿の中。いにしえの雰囲気に似合いの装束で歩いているのは、まだ少女と呼べそうな正体不明の女だ。その前を行く自分と言えば、作業着に近いようなすすけた色合いの恰好で、キャップで顔も誤魔化そうとしていて、確かに、怪しいと言えば怪しい。その状況に、心の中で苦笑いした。「いいか?僕の真後ろを歩くんだぞ。横にはみ出たら、監視カ...
View Article『運命』~Synchronicity(3)
名前を言い当てられた少女は、目を丸くして固まっていた。「し、信じられない・・・、どうして、分かるの?初めてよね?私たち、初めて会ったのよね?」「ああ、初めてだ。」「私、いかにもシン・チェギョン、と言う顔をしているの?やだわ、それじゃあ、名札を付けて歩いているみたいじゃないのよ!」「ははは、僕みたいな能力のある人間は、そういないから、安心しろ。」「あー、でも、本当に驚いた!そう言えば、あなたの名前は?...
View Article『運命』~Synchronicity(4)
日は完全に落ちて、楼閣の外の林は真っ暗になったが、そのうち、穏やかな光が木の葉に透けて、地面を照らし始めた。「そうか・・・今日は満月だ!」「あ、本当!木の葉の間から、お月様が見える!」「月の光りって、本当に明るいな。この辺は外灯も無くて、真っ暗になるはずなのに・・・。」「私が戻れるように、照らしてくれているみたい・・・。これなら、懐中電灯は必要ないわ。」「戻るのか?」「うん・・・、みんなに心配かけち...
View Article『運命』~Synchronicity(エピローグ)
『運命』は巡っている求めるならば 自ら歩みを進める他ない エピローグ 春がやって来た。 私は、堂々と王立大学の構内を歩いている。 家の借金は、”宮”の援助でひと段落ついて、私も弟も安心して進学できたのよ。と言っても、もちろん、私がお妃になるわけじゃないの! 泥棒さんと別れた後、私は薄暗い庭を歩いて、正殿に向かった。...
View ArticlePHD大感謝♪
PHDエントリー作品 『運命』~Symchronicity 全6話をお読みいただいた皆様、ありがとうございました。 深く深く、感謝申し上げます。 このような企画に参加させて頂き、本当に愉しい思いをさせて頂きました。PHD開催にあたってご尽力された皆様には、お礼と称賛の拍手を送りたいです。 これから、記事アップされる方、まだまだ、お待ち申し上げます!...
View Article本館で応援♪
おはようございます。 先ほど、本館に記事アップ致しました。PHDを影ながら応援する記事です。エントリーはしていません。 しっぽなはーと~”宮”妄想の本館結ばれる『運命』: カテゴリー♪勝手にPHD 2014♪http://jammylove.blog.fc2.com/blog-category-32.html...
View Articleお祭りあとの、再出発♪
こんにちは。 とうとう、PHDが終わってしまいました。全てのエントリー作品を読破することは難しいかもしれませんが、これから、時間をかけて楽しもうと思っています。 勝手にお邪魔することと思います。<m(__)m> ああ、楽しみ♪ 予想していたことではありますが、PHDにエントリーすることで、訪問者数、登録者数も増えました。 本当にありがとうございます。...
View Article須臾の恋落ち(13)
たとえ実の母親であろうとも、相手はこの国の国母。 シンは、皇后を前に、居住まいを正し礼節を守っていたが、実はそれが、照れを隠すための手段にもなっていた。 自分の恋愛について、母親に報告するというのは、男にとっては、何とも気恥ずかしいものだ。 「母上、今日は、お願いがあって伺いました。」 「太子、珍しいですね?そのように改まって・・・。」...
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